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映画『ベイビー・ブローカー』 初めての韓国映画

こんにちは、ずず(zuzu)です。

人生初の韓国映画『ベイビー・ブローカー』を観てきました。

監督は『誰も知らない』『万引き家族』などの映画作品を手がけた、是枝裕和氏です。

日本人監督の作品ですが、出演する俳優が韓国人で、韓国語、撮影も韓国で行われたことから、韓国映画となるようです。

gaga.ne.jp

滝のように流れるほどの大雨の中、坂道を登ったところにある赤ちゃんポストの前に、若い女性が赤ちゃんを置き去りにする、印象的なシーンから物語は始まります。

赤ちゃんポストの奥には、当直のアルバイトの男性とその一味が待機していました。

彼らこそ、赤ちゃんポストに託された子どもをいなかったことにして、人身売買で利益を得るベイビー・ブローカー。

そして施設の前には、車内から様子を伺う、ふたりの女性刑事が。

ふたりはベイビーブローカーを顧客ともども現行犯逮捕するため、尾行しているのでした。

 

ブローカーたちは、その男の赤ちゃんを自宅に連れ去りますが、翌日、施設に母親が赤ちゃんを引き取りに来たことを発端に、母親と赤ちゃんを車に乗せて旅に出ることになりました。

行く先々で顧客と対面しますが、途中、ブローカーの片割れの男性が育った児童養護施設に立ち寄り、通常6歳とまでと言われる年齢までに養父母が見つからなかった8歳の男の子も連れ、5人の旅となります。

オンボロのバンで韓国内を移動するのは、私の大好物のロードムービーそのもの。

韓国の地方の風景が珍しく、楽しめました。

 

道中、赤ちゃんを中心に5人は心地よい関係を築いていきますが、簡単に仲間を裏切る輩も出てきます。

そんな危なっかしい関係とはいえ、8歳男児へのごほうびとして遊園地に行くシーンでは、このまま5人で血のつながらない家族として生きていくのもありかなという雰囲気になりました。

ですが、女性刑事は母親にはっきりと言います。

「あの人たちは親にはなれない」

と。

どんなに温かくとも、違法な手段で生計を立てる、血縁のない人たちとは、本物の家族にはなれません。

逆に、たとえ子を捨てても、母親は母親ですし、きちんと結婚して職に就き、経済的に余裕がある人が里親になれるのです。

万引き家族』もそうでした。

自分の家より”偽家族”の方が本当の家族のようで、居心地がいい。

だけど、本当に家族にはなれない。

是枝監督は”疑似家族”という表現をされていますが、私的には”偽家族”ですね(笑)

けれど、”偽家族”でも助け合って暮らしていれば、フツーの家族として認められるような社会になれば、救われる人がいるんじゃないかと思ってみたり。

8歳男児が楽しかったのは遊園地ではなく、洗車場で水浸しになって大人を困らせたこと。

子どもって、日常の些細なことで、大人と笑い合ったことが楽しいんですよね。

 

また、この作品は、役者さんたちがそれぞれ個性的で、とても魅力的でした。

すごい昔の話で恐縮ですが、私、ヨン様ブームのころ一度だけソウルに行ったことがあります。

そのときのガイドさんが若い女性で、先日、日本の有名アイドル(現在はママ女優として活躍中)をアテンドしたと言うのです。

そして、韓国では芸能人は雲の上の人で、普通の人とは一線を画し、セレブ中のセレブだと何度も繰り返して言うのです。

裏を返せば、日本のアイドルは、韓国では通用しないということを言いたかったのだと思いますが、それだけ韓国の芸能界は競争が激しく、ルックスだけではなく実力が伴わなければ成功できないのだと感じたことを思い出しました。

 

映画を観た帰り、カーステレオから”乳児の遺体が見つかり、女性を逮捕”というニュースが流れてきました。

当たり前のように起こる事件、子どもの命を守るほか、長い人生を生きていかなければならない若い女性を犯罪者にしないためには、やはり赤ちゃんポストは必要だと思います。

 

『ベイビー・ブローカー』は『ドライブ・マイ・カー』のように長尺でなく、2時間ちょっとにまとめているにも関わらず、メッセージをしっかり受け止めることができ、大満足の作品でした。

今後、韓国ドラマにハマりそうで怖いです。

その前に、是枝作品で観ていないものもぜひ観たいですね。

またね。