ずずぶろぐ

ていねいでない暮らし

映画『ノマドランド』悲しいほどたくましい漂流する労働者たち

こんにちは、ずず(zuzu)です。

すでに動画配信が始まってますが、『ノマドランド』とてもよかったので、記憶が薄れないうちにブログに残しておこうと思います。

 

静寂のロードムービー、派手な面はありません

 

ロードムービーがたまらなく好きです。

ロードムービーはハリウッドのお家芸ですが、日本のものも結構いいものがあります。

古くて恐縮ですが、『幸福の黄色いハンカチ』なんかも広義のロードムービーだよねーと思いつつググってみると、しっかり"ロードムービー/ドラマ"に分類しているサイトを発見しました(笑)

ちなみに『ノマドランド』は何に分類されていると思いますか?

答えは"ドラマ/西部劇"でした...ドンパチやるわけではないのに(笑)

 

置いといて。

 

原作は格差社会を啓発しているようだが

 

この作品は『ノマド:漂流する高齢労働者たち』という本が原作です。

この本は未読ですが、キャンピングカーを住処とし、職を求めてアメリカ国内を転々とする人々を追って取材し、一冊にまとめたルポルタージュのようです。

 

アメリカにはキャンピングカーやトレーラーハウスで暮らす人々がいるということは知っていて、自由でカッコイイなあとなんとなく憧れていました。

一方で、映画やドラマから、アメリカではそういった暮らしをしている人を蔑むような空気があることも感じ取っていました。

 『ノマドランド』は後者の社会的背景の中での物語です。

車上生活者に厳しい目が向けられていることを承知の上で、ノマド生活をしている人々は、自らの意思で過酷な生き方を選択しているように感じました。

ハウスレスになるには相当の事情があってのことだから、放浪者たちが多くを語る場面はそれほどありませんでした。

素性を語っていたのは、戻る場所がある人に限られていたような気がします。

できれば、彼らが放浪生活者となった理由をもっと知りたかったというのが正直なところです。

とはいえ、放浪生活者となった原因だけを追求した作品だったなら、心に響くことはなかったでしょう。

国家を頼ることなく、自分の食い扶持は自分で稼ごうとする悲しいほどたくましい放浪者たち。

それでも、季節労働者として、期限付き労働者として、職を求めて彷徨う彼らに世間は冷たい。

社会を底辺で支えているのに。

 

助け合う漂流者たちは理想の社会を形成していた

 

夜間駐車する場所が見つかられなければ、その夜は走り続けるのでしょうか?

彼らが原野や広大な公園にキャンプを張って助け合うのは、きっとそういった絶望を知り尽くしているからに違いありません。

偶然出会った同じ境遇の者同士、協力し合って生き抜いていくことは当然といえば当然で、ある意味理想の社会像です。

 

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映画を観終わった後、ゴーという静かな音と振動の余韻に包まれました。

もうしばらく彼らと一緒に旅していたかったのだと思いました。 

 

 

またね。