ずずぶろぐ

ていねいでない暮らし

【本/推し】締まり屋ヴァーノン、浪費家エルヴィス

こんにちは、ずず(zuzu)です。

また、エルヴィスネタなのですが…

締まり屋ヴァーノンの不安と不満

またまたこちらの書籍の中からですが、エルヴィスの父ヴァーノンが締まり屋だったとの記述が、とても興味深かったです。

(前略)彼自身、手に余る仕事で押しつぶされそうになっていた。エルヴィスのビジネス・マネージャーとして、息子の個人的な財務管理を任されてきたのだ。巨額の収支計算や税金対策、大量の書類作成など、専門知識のない人間にこなせるような内容ではなかった。ヴァーノンは、極度に締まり屋で、用心深かったし、何よりも、常に信頼できる身内であり味方だった。家族は運命共同体として一体であり、家族以外の人間は信用しない南部労働者階級の伝統の下で、エルヴィスは、自分の周辺を身内の者で固めていた。パーカー大佐をマネージャーとして雇い、生涯にわたってチームを組んできたのも、パーカー大佐が南部人であると思い込んで信用していたからだ。実際には、オランダからの不法入国者だったといわれるパーカー大佐は、南部的忠誠にも南部的礼節にも大した興味はなく、彼にとってはカネがすべてだった。(後略)

(前略)ヴァーノンは、子供のころから、農作業や雑役の手伝いをして過ごし、学校も休みがちだった。中学二年で退学した後は、教育らしい教育を受けたことはなかった。そんなヴァーノンが、エルヴィスのビジネス・マネージャーとして、資産の管理・運営を任されたのだ。赤字にならないように絶えず気を配り、びくびくしていた。エルヴィスの方は浪費癖がある上、カネのことにはまったく無頓着だった。ヴァーノンは、高級自動車や、宝石、贈り物、寄付などに、湯水のようにカネを使う息子を嘆き、たしなめながら、勘定を支払った。使用人たちの管理もヴァーノンの仕事だった。1976年7月、ヴァーノンは、コスト削減のために、三人の取り巻きを解雇した。そのうちの二人レッド・ウェストとサニー・ウェストは従兄弟同士で、エルヴィスの長年の友人であり、忠実な部下であり、有能なボディーガードだった。この事件が後に、まさかエルヴィスを苦しめる厄介な問題になるとは、ヴァーノンにはまったく思いおよばなかった。

株式会社角川学芸出版発行 前田絢子著『エルヴィス、最後のアメリカン・ヒーロー』(2007年)より引用、以下同じ

浪費家エルヴィスの不安と不満

対して、エルヴィスが父に失望していたことについても言及しています。 

 ヴァーノンは、エルヴィスにとって、大切な肉親ではあったが、実際のところ、父親にはたびたび失望させられることがあった、1938年、エルヴィスが三歳になった年のこと、不況と貧困が蔓延する南部に暮らすプレスリー一家を襲う、打撃的な出来事があった。ヴァーノンが、小切手偽造事件を起こしたのだ。わずか数ドルをくすねるために、数字を書き換えたのが発覚した。ヴァーノンは、仲間二人と共に有罪判決を受けて、パーチマン刑務所に送られた。服役した八ヶ月の間、母グラディスは孤独で暗い日々を過ごした。(中略)父は、実直で働き者ではあったが、心の深いところで意思を疎通させる繊細な感性や情感をもった男ではなかった。もう一つ、エルヴィスを失望させる出来事があった。母の死後、あまりにもすぐに、ある女性に目がくらんだのだ。エルヴィスと共にドイツにやって来たヴァーノンは、同じ米軍基地に配属されていた軍曹の妻で、離婚話が進んでいたディー・スタンレーにのぼせ上がった。そして、1960年7月に、彼女と結婚した。エルヴィスは、亡き母を思い、早過ぎるこの再婚に心を痛め、結婚式に出席しなかった。(後略)

やはり毒家族かもしれない

ヴァーノンは今で言う毒親にあたるかはなんとも言えませんが、プレスリー一家はある種の毒家庭であったとは言えると思います。

それは、ヴァーノンの逮捕、収監が、一家を精神的に追い詰めたから。

エルヴィスは3才という幼さながら家族の不幸な状況を感じ取り、悪夢と夢遊病のような状態が長く続いたらしいです。

人間関係のトラブルは避けられない

それにしても、親子って難しいですね。

親が子を、子が親を愛おしく思う気持ちは尊いですが、血が濃くて距離が近すぎるぶん、無意識に相手にこうであってほしいと強く押し付け合うような気がします。

貧しい労働者階級出身のヴァーノンは、息子が巨額の富を手に入れても財布の紐を絞め、その息子エルヴィスは稼いだ金を湯水のごとく使ってしまう…

これってなんでしょう。

ヴァーノンが子ども時代に経験した貧しさと、エルヴィスが経験した貧しさでは、前時代のヴァーノンのほうが過酷であったと想像します。

エルヴィスは、“食べるものがないということはなかった”と語っていますから。

ですが、成金となった後も、金庫番のヴァーノンは締まり屋で、稼ぎ頭のエルヴィスは浪費家。

もうこれは、それぞれの性格そのものなんだと思います。

夢見がちで楽観的で理想家のエルヴィスとは対照的に、実直で現実派のヴァーノン。

そんな節約体質のヴァーノンが、エルヴィスの高校時代からの長い付き合いの取り巻きレッドとその従兄弟のサニーをクビにしたのは、元々ヴァーノンはレッドと相性が悪かったこともあるようです。

財政難を口実に目障りな二人をクビにした可能性もありますが、それにエルヴィスは同意したのでしょうか…

人間が集まるとトラブルはつきものです。

下の動画は映画『エルヴィス』のものです。

www.youtube.com

またね。