こんにちは、ずず(zuzu)です。
アメリカの白人労働者階級について書かれた、J.D.ヴァンス著『ヒルビリー・エレジー』の感想の続きです。
情緒不安定な母に振り回されながらも、近くに住む祖父母の支えにより、著者は過酷ながらも愛情豊かな少年時代を過ごしました。
著者が高校に入学する頃、母の彼氏の住む町に一緒に住むよう母に言われ、それを拒否すると、母は著者が怒りをコントロールできないからと、自分のセラピストのカウンセリングを受けさせました。
そのとき著者は14歳でしたが、祖父は亡くなり、祖母の健康状態は悪く、おじとおばは小さな子がいて、姉も子を産んだばかりで、どこにも行くところがないと感じたそうです。
セラピストに不信感を募らせた著者は、セラピストに本心を明かすことはなく、実父のところに行くとして、事を収めました。
そして、実父(母の2番目の夫)の新しい家庭で暮らすことになりましたが、うまくいかず、母の別の新しい彼氏の家で暮らすことになりました。
しかしそれもうまくいくことはなく、結局祖母の家で暮らすことになります。
祖母の家で落ち着いた3年間を送った著者は、変わり始めます。
祖母は破天荒なヒルビリーではありましたが、教育を大切に考えていました。
著者はスーパーでのアルバイトを通して、社会の仕組みや貧困を知ることになります。
著者は大学に進学することにしたものの、願書を記入する際、保護者を母にするのか、それとも祖母にするのかというところから悩んだ、というくだりがありました。
著者の家庭環境がいかに複雑で不安定であったかということを表しているエピソードですが、著者の中で大学進学は今ではないと感じるようになり、海兵隊に入隊します。
海兵隊では厳しくも規則正しい生活を通して、本来であれば親から自然に教わることを叩き込まれることになりました。
安月給ながら安定した収入を得るようになり、それに加えて著者にはオンラインポーカーでの安定的な収入がありました(うらましい!)。
その副業収入(?)は、病弱な祖母の健康保険料に充てることになりました。
この瞬間、著者はこれまで世話になってきた祖母の庇護者となったことに気づきます。
海兵隊での4年間の任務を終えた後、著者はオハイオ州立大学に入学し、新たな世界に飛び込み、充実した学生生活を送ります。
しかし、同級生よりかなり年上であったため、価値観の違いなどが受け入れることができず、早くここを出たいを思うようになり、入学から1年と11ヶ月で大学を卒業します。
そして、イェール大学のロースクールに入学し、エリート街道を歩み始めます。
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本の内容はざっとこんな感じです。
端折ったところと、ムダに説明が長いところが混在するのはお許しください。
著者は、祖母や母から頭脳明晰なところを譲り受けたのかなと思います。
そのせいか、少年時代にキリスト教にのめり込んだエピソードには、ちょっと引いてしまいましたが(笑)
海兵隊に入隊して、ようやく規則正しい生活を送ることができるようになり、多くはない収入の一部を祖母に援助するようになったくだりは、胸が熱くなりました。
時系列に書かれた本書の中で、景色が一気に変わった、一番感動した箇所です。
人は愛情や正義だけでは成長できない、やはり安定した日常生活の中で自律や自制すること、そして経済的な自立が必要なのだと思いました。
それから、日本のように学習塾に通うこともなく、州立大学に入学したこともすごいなーと思いましたが、その4年制の大学を、わずか2年弱で卒業したところに驚きました。
それで授業料や生活費を節約できるとしたら、学生生活を謳歌したい人を除いて、特に文系で創作をしない学科などは、特段問題ないかなと個人的に感じます。
著者はヒルビリーを、政府やエリートなどを信じず、自分は努力をしないが、都合が悪いことは他人や社会のせいにする傾向があると言っています。
一筋縄ではいかない人々、というのが私の印象です。
またね。